便秘

便秘とは、一週間に2回、またはそれ以下、あるいは3~4日に1回以下の排便回数である 状態をいいます。また、排便回数の低下だけではなく、便の量が少ない、非常に硬くて、強い力みと 苦痛を伴う、どうしても出きらないような残便感がある、というのも便秘といいます。
便秘の種類は、主に3つに分類されます。
1)習慣性便秘
便秘の中で一番多いのがこのタイプです。排便のメカニズムを簡単に説明すると、 「物が胃の中に入る」→「結腸に強い運動が起こる」→「内容物が次々と直腸へ移行する」→ 「便意」→「排便」となるわけです。
この排便までの運動の特徴として、
①空腹の時ほど、胃に物が入ったあとの便意が伝わるまでの運動が強い。
②意識的に便意を我慢すると、すぐ便意がなくなる。という事があげられます。この意識的に我慢 するという習慣がついてしまい、ついつい排便のタイミングを逃してしまっているのが、 大きな原因といえます。
人間には、排便を促す「胃・結腸反応」というものがあり、コレは、朝一番によく起こります。 そのため、朝食前にコップ一杯の水や牛乳を飲む、便意がなかったとしても、 朝食後は必ずトイレに行く、朝食は必ずとり、しかも多めを心がける、普段から野菜や果物、 海藻など食物繊維を多く含んだ物を食べる、といった方法が効果的です。
食物繊維を多く含むものには、ゴボウ、豆類、イモ類があげられます。
2)弛緩性便秘
高齢者や内臓下垂ぎみの方で、腸そのものがたるんでおり、排便機能が低下している事が原因です。
このタイプは習慣性便秘の治療法プラス、からだの筋肉強化が効果的です。(腹筋運動が良いです)
3)けいれん性便秘
ストレスなどによって、腸を動かす神経が異常に興奮し、腸が痙攣を起こし、便の通過が妨げられます。その際に、便の水分が腸壁より吸収され、細い便やコロコロ便となって排出されるのがこのタイプです。このけいれん性便秘は、精神的な緊張が続く職業に多い事と、下痢と便秘を繰りかえす事が特徴です。
このタイプの治療法は、ストレスの緩和が勧められます。
4)器質性便秘
大腸に何らかのトラブルがあったり、他の内臓の病気が隠れているケースもあります。
このようなケースは、他の内臓の治療もあわせて行ないます。

中医学から見た便秘とは?

中医学から見た便秘とは?

中医学では、排便は毎日あることが正常な状態と考えます。
しかしながら、毎日の排便がなかったり、スムーズに排便できなかったり、 排便時間が長くなったりするものを「便秘」ととらえて、 その症状により3つのタイプに分けて改善します。

1-腸に熱をもっているタイプ

1-腸に熱をもっているタイプ

なんらかの原因で腸が熱っぽくなり、腸が乾燥して便をうまく押し出せなくなったのが原因です。 腸が熱を持ち、腸内の水分を奪ってしまうため、便はコロコロとした硬い便となります。 頑固な便秘に多いタイプです。便秘のほかに、口が渇く、お腹が張ったよう、口臭が気になる、 といった症状をあわせもつ事もあります。
治療法は「大黄」という、通便作用とともに腸の熱をさましてくれる生薬を含む大甘丸(だいかんがん)が オススメです。状態の良し悪しによって服用する分量を自分でコントロールできます。 お腹の張りが強い、また精神的な理由により便秘と下痢を繰り返す、ストレスが多い方は、 「気」の流れをスムーズにしてくれる星火逍遥丸(せいかしょうようがん)をあわせて服用すると良いです。 また、腸内をカッカと熱くさせてしまう、香辛料などの辛いものやお酒は便秘を悪化させる 原因になりますので、普段の食生活の改善が必要です。

2-腸の潤い不足タイプ

2-腸の潤い不足タイプ

腸を潤している水分が、体の中で不足してしまっているのが原因となっているのがこのタイプです。 便はコロコロと硬く、ウサギの糞のような状態です。産後や、体力の低下した方に多くみられます。 このタイプは便秘のほかに、皮膚が乾燥する、顔色がわるい、動悸、めまいを感じるときがある、 貧血気味、爪がもろくて割れやすい、といった症状をあわせもつことがあります。
治療には、腸に潤いを与えるようなマイルドな漢方薬を用います。腸の壁にオイルを塗るみたいに、 潤滑油のような働きをしてくれる麻子仁丸料(ましにんがんりょう)がオススメです。 更に、このタイプの方は、体をゆっくり休める事が必要です。 また、腸の蠕動運動を促すハチミツやヨーグルト、プルーンなどを積極的に取るようにしましょう。

3-りきむ力不足タイプ

3-りきむ力不足タイプ

便意はあるけれど、便を排出する力が不足してうまく出し切れないのがこのタイプの特徴です。 やっと便を出せたかと思ったら、ぐったりと疲れてしまいます。 多くは、体が弱っている低血圧の方に多くみられます。 便秘のほかに、普段から疲れやすい、ご飯がおいしくない、声が弱々しい、便がやわらかいときもあり、必ずしもカチカチ便ではない、といった症状が見られます。 なかには「脱肛」を併せ持つ方も見られます。
このタイプは、からだのパワーとなる「気」が不足しているので、「気」を補う 補中益気丸(ほちゅうえっきがん)という漢方薬を用いて、便を出す力を助けてあげます。 更に、頑固な便秘には、通便作用のある麻子仁丸料(ましにんがんりょう)をプラスして服用すると 良いですよ。 このタイプは、腹筋の力を強めてあげる事も必要なので、軽い腹筋運動や、無理のない程度の 運動をするのも方法の一つです。
また、痔のある人は、痛みから排便を我慢して便秘になりやすくなっています。 便秘になると痔をさらに悪化させるという悪循環になりやすいので、 痔と便秘は同時に治療することが必要です。痔でお困りの方は、患部の血流を促し、 痛みなど炎症を抑えてくれる槐角丸(かいかくがん)を併用すると良いでしょう。

これらはほんの一例です。他にもたくさんの処方があり、使うお薬はその方の体質に合わせて選びます。メール相談をご希望の方は問診表にお入りください